◆◇◆ 卒業論文 No.02 ◆◇◆             Back
■ 【 著 者 】:有馬 夕香 ( 教育学部・中学校教員養成課程・保健体育専攻 )
■ 【 題 目 】:バドミントンにおけるゲーム分析と戦術
【 論文の概要 】
 はじめに
バドミントン競技において、ゲームを有利に展開するためには、個人的な基本技能を向上させることも大切であるが、対戦相手の攻撃パターンや弱点を的確に捉え、より有効な戦術を組み立てることも欠かせない。本研究は、バドミントン競技における混合方略を、一方の利得がちょうど他方の損失に等しくなる「ゼロ和ゲーム」と仮定して、ゲームにおける合理的戦術を「ゲームの理論」に基づいた近似解法の手法によって導き出すことを試みたものである。
 方 法
(1)被験者
本研究では、弘前大学バドミントン部に所属する男子学生2名を被験者とし、そのシングルス・ゲームを研究対象とした。この2名の被験者は、弘前大学バドミントン部内では、競技レベルがトップクラスであり、過去の対戦データから、シングルス・ゲームでは実力差がないと言える。
(2)対戦データの収集
実験では、被験者に計3回のシングルス・ゲーム(3セットマッチ、2セット先取)を行わせた。ゲーム@は、ゲーム分析の対象となるゲームで、合理的戦術を得るためのものである。ゲームAとゲームBは、ゲーム@の分析の結果、導き出された戦術が実際のゲームにおいて有効かどうかを検討するためのゲームである。また、実験は弘前大学第2体育館で実施し、ゲーム全体が見渡せる2階キャットウォークにデジタルビデオカメラ(SONY MODEL DCR-TRV900)を設置し撮影を行った。
(3)ゲーム分析の流れ
 
1)基準となる被験者の設定
ゲーム@では、被験者2名(被験者S・O)に戦術的な指示は与えず、シングルス・ゲーム(3セットマッチ、2セット先取)を行わせた。ゲームの結果は、被験者Sが1セット目5−15、2セット目15−11、3セット目15−9のセットポイント2対1で勝った。 そこで、本実験では2名の被験者のうち、ゲーム@で敗者となった被験者Oを基準として、被験者Sに対する合理的戦術を立てることとした。
 
2)分析の視点
ゲーム@のVTRから、まずは各ラリーのショット数を数え、そのショットの球種とコースを明らかにした。その結果、第2打目(サーブレシーブ)までにラリーの勝敗が決定したのが全ラリー数の約30%、第3打目まででは約45%、第4打目までで60%となっていることがわかった。従って、本実験の被験者の場合、競技レベルが近接していることを考えれば、ゲームの理論に基づく戦術は、第2打目のサーブレシーブまで組み立てれば、ゲーム展開が優位になると思われる。また、本実験では、第1打目のサービスの方略として、相手サービスコートを4分割し、偶数ポイントのときの攻撃パターンと奇数ポイントのときの攻撃パターンについて、それぞれ4つの方略を設定した。同様に、第2打目のサーブレシーブについては、相手シングルスコートを6分割し、偶数ポイントのときの攻撃パターンと奇数ポイントのときの攻撃パターンについて、それぞれ6つの方略を設定した。
 結果及び考察
ゲーム@の対戦データから、近似解法による演算をした結果、被験者のOとるべき合理的戦術として、次のような結果が得られた。
(1)被験者Oが偶数ポイントでサーブするときは、相手サービスコートの1,2,3,4エリアについて、それぞれ「3:0:37:60」という攻撃比率となった。従って、被験者Oは、2エリアへのサービスは行わず、3,4エリアへのロングサービスを「4:6」の割合で打ち、1エリアへのショートサービスは3,4エリアへのロングサービス10本に1本の割合で打つというのが最も合理的な攻撃パターンとなる。
(2)被験者Oが奇数ポイントでサーブするときは、相手サービスコートの1,2,3,4エリアについてそれぞれ「16:0:16:68」という攻撃比率となった。従って、この場合、被験者Oは、2エリアへのサービスは行わず、3,4エリアへのロングサービスを「2:7」の割合で打ち、1エリアへのショートサービスは(1)の場合と同様、3,4エリアへのロングサービス10本に1本の割合で打つというのが合理的攻撃パターンとなる。
(3)被験者Oが偶数ポイントでサーブレシーブするときは、相手コートの1,2,3,4,5,6エリアについて、それぞれ「3:37:0:7:53:0」という攻撃比率が得られた。しかし、この場合、結果として得られた1,3,4,6エリアへの攻撃比率がゼロ、またはゼロに近い値になったため、実験では、2,5エリアのみへ「4:5」の割合でサーブレシーブを打つという戦術を組み立て、これを被験者0の攻撃パターンとした。
(4)被験者Oが奇数ポイントでサーブレシーブするときの攻撃比率は、相手コートの5エリアのみに「100」という結果が得られた。従って、この時の戦術としては、他のエリアへの攻撃を若干交えながら5エリアを中心に攻めるという戦術を被験者Oに指示した。

ゲームA、ゲームBでは、これら4通りの攻撃条件下における戦術を被験者Oに指示し、「ゲームの理論」に基づいて組み立てられた戦術の有効性を検討してみた。その結果、被験者Oは、いずれの試合も、ほぼ指示した通りにゲームを展開し、セットカウント2−0で勝者となった。この結果と、本実験の被験者がシングルス・ゲームにおいて実力差がないことを考えれば、本実験で試みた戦術の立て方が、実際のゲームにおいても有効であることが示唆される。