◆◇◆ 卒業論文 No.05 ◆◇◆             Back
■ 【 著 者 】:及川 貴之 ( 教育学部・小学校教員養成課程 )
■ 【 題 目 】:陸上競技の曲走路における疾走パフォーマンスに影響を及ぼす要因について
【 論文の概要 】
 目 的
陸上競技のトラック種目では、直走路のみを走る種目は僅かであり、殆どの種目が曲走路を走ることになる。曲走路の疾走において、それを得意とする者、不得意とする者がいるが、この理由は未だ明確に説明されていない。本研究では、曲走路における疾走パフォーマンスに影響を及ぼす要因について考察する。
 実験方法
1)被験者:
弘前大学陸上競技部員男子14名、女子5名、計19名を本研究の被験者とした。なお、本研究では、各被験者の直走路疾走タイムを100とした場合の曲走路疾走タイムの比率を求め、103≦P<106をAグループ、100≦P<103をBグループ、97≦P<100をCグループとし、被験者を3つのグループに分けた。
2)測定項目:
直走路、曲走路ともに50mの全力疾走を行わせた。曲走路においての疾走は400mトラックの第1レーンを使用した。測定項目は @50m走の疾走タイム(sec.) Aストライド長(m) Bピッチ(回/sec.) C曲走路の30m地点における内傾角 D接地時間(sec.)とした。Aについては、スパイク痕の先端間をストライド長として計測。なお、本研究では、右脚キック時のストライドを「右ストライド」、左脚キック時のストライドを「左ストライド」、左右を平均したストライドを「平均ストライド」とした。Cについては、デジタルビデオカメラ(SONY MODEL DCR−TRY7)により、曲走路の30m地点の疾走を正面から撮影。接地点と重心を結ぶ線と、鉛直線のなす角を両脚接地時それぞれ求め、その平均値をもって内傾角とした。
また、下肢の形態(下肢長、大腿長、下腿長、大腿囲、下腿囲)と、等尺性最大収縮力(腕屈曲力、腕伸展力、脚屈曲力、脚伸展力)も測定した。
 結果と考察
1)ストライドについて
直走路でのストライド長は、3グループともグループ内におけるストライド長に左右差はみられなかった。ここから、直走路における左右のストライド差が、曲走路における疾走パフォーマンスに影響を及ぼす因子でないことを示唆することができる。しかし、グループ間で比較をすると、A、B、Cグループの順にストライド長が小さくなる傾向にあり、平均ストライドのA−Cグループ間には有意な差(p<0.05)が認められた。これにより曲走路の疾走パフォーマンスが高いグループは、総じてストライド長が短い傾向にあるといえる。
 また、曲走路のストライド長については、各グループ間で比較すると、A、B、Cグループの順にストライド長が小さくなる。ただ、曲走路では、3グループとも左右のストライド長に差があり、いずれのグループも、左ストライドが右ストライドより長い傾向にあった。これは、曲走路では、左方への内傾姿勢をとって走るため、疾走中の右脚の振り出しが左脚に比べて大きくなることが原因していると考えられる。
2)ピッチについて
 直走路におけるグループ間の平均ピッチを比較すると、A、B、C、3グループ間に差はなく、有意差も認められない。このことにより、直走路における平均ピッチの違いは、曲走路における疾走パフォーマンスに影響を及ぼす因子ではないということが考えられる。ただ、曲走路においては、A、B、Cグループの順に高くなる傾向があり、A−Cグループ間には有意な差(p<0.05)が認められた。このことから、曲走路における疾走パフォーマンスの高いグループは、曲走路を走るときにピッチを上げる事によって、そのパフォーマンスを高めていることが伺える。このことは、個人間での直走路と曲走路の平均ピッチ差と、直走路と曲走路のタイム差の間に高い相関(r=0.7253 p<0.01)がみられることからもわかる。
3)内傾角、接地時間、下肢の形態的特徴、及び最大筋力について
 疾走中の内傾角と接地時間については、いずれも3グループ間に有意な差は認められない。下肢の形態特性と最大筋力の左右差についても各グループ内において一定の傾向は見られなかった。従って、本研究では、これら疾走中の内傾角、接地時間、下肢の形態特性及び最大筋力値が曲走路の疾走パフォーマンスに影響を及ぼす要因としては認められなかった。