◆◇◆ 卒業論文 No.04 ◆◇◆             Back
■ 【 著 者 】:中津 功喜 ( 教育学部・小学校教員養成課程 )
■ 【 題 目 】:スポーツテストの評価における一考察 〜体格差が評価に及ぼす影響について〜
【 論文の概要 】
 はじめに
スポーツテストの分析結果に基づいて、子供の体力低下を示唆する研究報告は数多い。一方、児童・生徒の身長や体重等の形態は、年々向上傾向にあると言われ、スポーツテストの評価に関しても、これら形態要素を加味した考察を行ってみる必要があると考える。 例えば、筋持久力をみる「懸垂腕屈伸」の運動では、個人の体重はテスト結果にマイナス要因として働く。この時、挙上回数が同じならば、現行テストのように体重の大小に関係なく同じ筋持久力であると評価するのか、体重の大きい者は体重の小さい者に比べ高い評価をつけるのか、体力の評価理念・基準によって結果が異なってくる。本研究では、後者の立場に立って、青森県の児童・生徒の体力の経年的推移を身長と体重の形態要素を加味して検討を加えた。
 実験方法
本研究では、以下の項目について、青森県の児童・生徒の「体力・運動能力調査報告書」を基に、1972年〜1993年までの20年間の年次的推移を調査した。
 
1.形態
  (1)身長  (2)体重
 
2.体力要素
  (1)筋力 握力   背筋力
  (2)筋持久力    懸垂腕屈伸
  (3)全身持久力  踏み台昇降運動
  (4)柔軟性     伏臥上体そらし 立位体前屈
  (5)瞬発力     垂直とび 50m走 走り幅跳び ハンドボ−ル投げ
  (6)敏捷性     反復横とび
 結果及び考察
1.形態について
青森県の児童・生徒の身長と体重は、男・女とも全年齢において年次的に増加している。その値は、20年間で、身長が男子2cm〜6.5cm、女子3cm〜5cmの範囲で伸び、体重は、男子が2.5kg〜7kg、女子が3kg〜5kgの範囲で増加している。
2.体力・運動能力について
(1)筋力を評価する握力テストの結果は、男・女とも増加傾向を示す年齢、減少傾向を示す年齢があり、一定の傾向は認められない。一方、背筋力は、全体的に減少傾向を示すものの、身長を考慮した、腰関節トルクとして再評価すると、減少の統計的有意差はなくなる。
(2)筋持久力をみる懸垂腕屈伸のテストでは、男・女とも全年齢において記録が低下している。しかし、このテストの成績にマイナス要因として働く体重を加味すると、背筋力のときと同様、その低下傾向に有意差は認められない。
(3)全身持久力を評価する踏み台昇降運動は、先のテスト項目とは異なり、男・女ともほぼ全年齢で記録が向上している。しかし、このテストの成績は、身長の大小が影響し、身長の大きい者は有利になると考える。そこで、踏み台昇降運動の結果に身長を加味して、その経年的推移を再評価すると、逆に低下を示す年代もあらわれ、一定の傾向は見い出せなくなった。
(4)柔軟性のテスト種目として実施されている伏臥上体そらしと立位体前屈のテストは、共に、男・女とも低下傾向が認められる。この2つのテストのうち伏臥上体そらしについては、身長と体重の形態要素が、それぞれプラスの要因とマイナスの要因として働き、結果として形態要因の影響は相殺されるものと考える。また、立位体前屈のテスト結果も形態要素が影響するとは考えられず、2つのテスト結果が示す傾向は、真の経年的推移を示すもの思われ、この20年間で青森県の児童・生徒の柔軟性は低下してると言える。
(5)瞬発力のテストには、垂直とび・50m走・走り幅跳び・ハンドボール投げの4つのテストがある。このうち垂直とびは、男・女ともほぼ全年齢で記録の向上が認められるが、他の3つのテストにおいては、全て低下傾向を示す。これらのテストにおける形態要素の影響を考えてみると、ハンドボール投げでは形態要素の影響はほとんどなく、50m走と走り幅跳びのテストにおいては身長はプラス要因、体重はマイナス要因として働き、その影響は相殺されると思われる。従って、この3つのテスト結果が示す低下傾向は、先の柔軟性と同じく、真の経年的推移を示すものと考える。ただし、垂直跳びのテストでは、体重がその記録にマイナス要因として働くにも関わらず、テスト結果が向上していることは、明らかに増加傾向を示すものであり、瞬発力のテスト項目間で評価に矛盾が生ずる結果となった。
(6)最後に敏捷性をみるための反復横とびのテストでは、男・女とも全年齢で成績が向上している。このテストでは、身長はプラス要因、体重はマイナス要因として働き、このテストに対する形態要因も相殺されると考える。従って、このテストにみられる経年的傾向は、真に児童・生徒の敏捷性の向上を示すものと判断される。
 まとめ
以上の分析結果から、身長と体重の形態要素を加味して、スポーツテストを再考すると、青森県の児童・生徒の各体力要素の経年的推移は、柔軟性に低下傾向が認められるものの、敏捷性は向上しており、瞬発力はテスト項目間の結果に違いが生じ、どちらか一方の傾向にあると判断することは出来ない。また、筋力、持久力、全身持久力については、従来から言われている低下傾向は、形態要素を加味して再評価すると認められなかった。